077029 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

第4話

Femme de ma vie ~Homme de ma vie <4> 




部屋に帰ってきた揺はシャワーを浴びてベッドに横たわった。

やはり疲れている。明日の準備もあるのに・・・

目をつぶって仰向けになった。

(最近、ビョンホンssiは夢にさえ出てこない。

私がメールの返事を出さないから怒っているのかしら。

今日は書かないと本当に出てこなくなっちゃうかも)

すると不思議とPCが呼んでいるような気がした。

仕事のメールを処理するので手一杯で

プライベートのアドレスはここ数日開けずじまいだった。

メールボックスを開けると案の定ビョンホンからのメールが入っていた。

受信。

揺はその文面を読みながら彼の自分を大切にしてくれようとしている気持ちで胸がいっぱいになった。

涙が止まらない。

そしてそんな彼に甘え続けている自分でいいのか不安になった。

<寂しくなったら朝でも夜中でも電話しておいで。望むところだ。>

その一文が揺の気持ちを揺らした。

今まで押さえ込んでいた彼への想いが一気にあふれ出した。

「もしもし」

気がつくと揺は受話器をとっていた。

次の言葉が涙でかき消されてでてこない。

「・・・・・」

「・・・・・・揺?」

「・・・・・・」

「・・揺?揺なの?」

受話器からビョンホンの眠そうな声が聞こえてきた。

黙ってひたすら頷く揺。

「受話器の前で頷いててもわからないんだよ。」

そんな揺の姿を察したビョンホンは頭をかき掻き笑いながら言った。

そしてベッドから起き上がると揺がすすり泣く声をしばらく黙って聞いていた。

「落ち着いた?大丈夫?」

少し小さくなった泣き声にビョンホンがそう声をかけると

揺は小さく「うん」と答えた。

「早速、挑戦的に電話してきたな。

どう、仕事はうまくいっているかい?」

「うん、それは大丈夫。それより連絡なかなかしないでごめんね。

メールいっぱいくれたのに。」

「そうだよ。ひどい女だ。

今までこんなひどい女と付き合ったことがない。

ある意味とても新鮮だね。」

「いじわる。でもありがとう。

嬉しかった。私のこと理解してくれてる気がして。

貴方の言葉に甘えてもいいのかな。私。」

と揺は自信なさげに言った。

「・・・・たぶん。

あんなにカッコよく書いたけど実は僕にも自信がないんだ。

なんせ全く初めてのケースだからね。

これまで自慢じゃないけど僕はあまり待たされたことがないから。

君は僕を待たせる初めての女性ということになるわけだ。

でも、知ってるだろ。

僕が初めてのことが異常に好きなこと。

初めてと聞くとなんでも挑戦したくなる。

この恋愛だって君が相手なら不足はない。

挑戦してみるよ『待つ』ということに」

ビョンホンはわざとふざけた口調で言った。

しかし、その言葉には彼が今までに見せたことのない不安な表情とある種の決意が感じられた。

「もし、待てない時は・・・どうなるの。」と揺。

「わからない。でも僕は昔から負けのわかっている勝負はしない主義だから。」

ビョンホンははっきりとそう言い切った。

その言葉を聞き、揺は彼を信じ、彼にすべてをゆだねることにした。

「わかったわ。じゃ、私貴方に甘えて好きにやらせてもらうことにする。

なかなか連絡できないと思うけど・・会いたいけど・・話もしたいけど・・やっぱり仕事も半端にしたくない。

だから頑張るよ。ごめんね。ビョンホンssi」

また揺は涙ぐみはじめた。

「謝るなよ。捨てられた男みたいじゃないか。

そのかわり僕の映画の撮影が始まったら、

君に見向きもしなくなるかも知れないけど泣くなよ。」

ビョンホンは笑いながら言った。

「大丈夫。セクションTV観るから」揺は泣きながらそう答えた。

「それ、ずるいよ~。揺ばっかり僕のこと知ってて。

わかった、じゃあ、取材拒否してやる。」

「あんなにたくさんのファンが待ってるのに、

そんなことできるわけないじゃない。ばかね。」揺は笑って言った。

「悔しいなぁ・・じゃあ、せめて僕の撮影中はちゃんと夢に出てこいよ。

最近サボりすぎだぞ。夢にさえ出てこない。」

ふてくされたようにビョンホン。

「貴方こそ、最近メールの返事出さないから、

ふてくされて出てこないのかと思ってた。」

「そっかぁ~」ビョンホンは電話口で大笑いしている。

「何?」と揺。

「時差だよ、時差。君が寝るとき僕は起きるんだよ。

だから会えないはずさ。揺、夕方昼寝しろよ。」

「そんなことできるわけないでしょ!仕事中なのに。

貴方がお昼まで寝ていてくれればいいじゃない。

そしたら会えるわよ。きっと」

「そっかぁ~。じゃ、今日はこれからまた寝るよ。

そのかわり今日の夢はすごいのにしてくれよ。」

「すごいのって何?」揺がとぼけて聞く。

「またまた。しらばっくれちゃって。待ってるからこのままベッドで。」

「何言ってるのよ。もう馬鹿じゃないの。」

呆れたように笑いながらもまんざらでない気分で揺は答えた。

お互い電話口で吹き出す。

いい歳をした大人が何を言ってるんだろう。

「私たちそうとうイカれてるわね。」

「ああ、どうかしてる。でも最高に楽しいよ。」

「うん、ほんと」

そういいながら揺は自分が何故ビョンホンに連絡を取らなかったのか身に沁みて感じていた。

彼の声を聞いた途端、揺の心はもうパリにはなく彼のもとに飛んでいってしまったようだったから。

仕事など頭の片隅にさえ居場所がなくなっていた。

また、すぐに戦闘モードに切り替えが出来るのだろうか。

不安がよぎった。しかし、切り替えなくてはいけない。

それが待っててくれるといってくれた彼に彼女が出来る唯一のことだった。

揺は固く決意した。

「ビョンホンssi」

「ん?」

「死ぬほど愛してる。だから必ず待っていてね。」

揺はしっかりとした口調で言った。

「ああ、わかった。行っておいで。」

ビョンホンは優しく温かい言葉で彼女を見送った。

「じゃあ、切るね。」

「ああ」

「あっ、そうだ。映画決まったの?」

「それは教えられない。せめてもの『抵抗』だ。

せいぜいやきもきすればいいさ。」

ビョンホンは悪戯っぽく言った。

「わかった。じゃあ、絶対電話しないから。

貴方に電話すると魂抜かれる気がするし。

貴方もせいぜい寂しがりなさい」揺も負けじと言い返す。

「はいはい、わかったよ。じゃあ、後でね。

思いっきり『お返し』してあげるから」

笑いながらそういうビョンホンにもう揺は返す言葉がなかった。

「もう。じゃ、後でね。」

揺のその一言に自分が勝ったことを実感したビョンホンは

にんまりと笑って受話器を置いた。

「さて、今日はお昼までゆっくり寝よう。あ~OFFにしておいて良かったぁ~」

そういうとまた真っ白なシーツの中にもぐりこんだ。


© Rakuten Group, Inc.